前回「基礎編(3)」での、贈与税が非課税になるパターンの「①贈与税の非課税枠(暦年課税110万円)、②相続時精算課税(最大2500万円。2024年からは暦年課税110万円も使える)」に引き続き、今回は「③贈与税がそもそも非課税、④非課税の特例(5つ)」を紹介します。
基礎編(4)でのご紹介は次のとおり。
・贈与税が、そもそも非課税財産(11種類)
①扶養義務者から通常必要とされる生活費や教育費のための支払い
②相続があった年に亡くなった方から贈与でもらった財産
但し、相続税がかかる(相続や遺言で財産を引き継いだ人に限る)
③離婚に際しての財産分与
④公益事業用の財産
(宗教、慈善、学術など公益を目的とする事業に供される部分)
⑤社会通念上、必要と認められる香典・花輪代
⑥~⑪その他省略
・非課税の特例(5つ)
贈与税の配偶者控除、住宅取得等資金贈与、教育資金贈与、結婚子育て資金贈与、特定障害者生活安定贈与(信託契約用)
贈与税が、そもそも非課税財産(11種類)
財産の性質、社会常識、公的配慮から、贈与税のかからない財産が相続税法で11種類定められています。確認してみましょう。贈与税のかからない財産(贈与の手続きがいらない)
種類 | 非課税の範囲 |
①扶養義務者からの生活費や養育費のための贈与財産 ※扶養義務者とは、 (1)配偶者、(2)父母・祖父母・子ども・孫などの直系血族、兄弟姉妹、 (3)おじ、おば、甥、姪などの親族で生活をともにする関係 | 扶養義務者から必要の都度、直接これらの用に充てるためもらった通常必要と認められる金額。 ※お金を使い切る。余ったり、預金にすると贈与税がかかるので、注意。 |
②社交上必要と認められる香典等 | 社会通念上相当と認められる「香典、花輪代、盆暮れの中元や歳暮、祝い金、見舞金など」 |
③公共事業の財産 | 公益を目的とする事業に供される部分「宗教、慈善、学術」 |
④特定公益信託から交付される金品 | 学術奨励のため、又は学資支給を目的として支給される金品で所定のもの |
⑤心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権 | 全額 |
⑥特定障害者扶養信託契約に基づく信託受益権 | 障害者非課税信託申告書に基づく信託受益権の価額のうちの6,000万円又は3,000万円までの部分 |
⑦公職選挙の候補者が贈与により取得した財産 | 国会議員、地方議会議員、知事、市町村長の選挙に関し、公職選挙法の規定により報告したもの |
⑧離婚に際しての財産分与 | 離婚を手段として贈与税や相続税を不当に免れる場合以外のもの |
⑨債務超過の場合の債務免除、債務肩代わり、低額譲受け | 債務者が債務超過である場合、その額 |
⑩法人からの贈与財産 | 贈与財産全額非課税。ただし、一時所得として所得税が課税される。 |
⑪相続開始の年に被相続人から贈与を受けた財産 | 贈与財産全額非課税。ただし、相続税がかかる。 |
つまり、通常の生活をしていくうえでの贈与、社会を良くし困っている人を助けるための贈与、当然の権利としての財産分与としての贈与等ならば、贈与税はかからないのです。 自分たちが勘違いしていないか、是非確認してください。
非課税の特例(5つ)
贈与の目的ごとに「非課税の特例」があります。贈与税が非課税になる限度も大きく、利用することで贈与税の節税をしつつ、財産を渡すことができます。ただし、効果が大きいこともあり、利用できる人も限られています。利用の前提条件をクリアしたうえで、手続きしないと認められません。手間がかかったり、損をする場合もありますので、事前に税理士に相談するなど、よく検討したほうがよいでしょう。
名称・前提条件 | 控除額 | デメリット・留意点 |
(1)贈与税の配偶者控除 (条件) ・婚姻期間が20年以上の配偶者 (内縁関係NG) ・住宅又は住宅を建てるためのお金をもらう ・翌年3月15日までに住み、その後も住む ・贈与税の申告を翌年3月15日迄に申告する | 最大2,000万円 + 暦年課税の非課税枠110万 合計 2,110万円 | 1.6億円まで相続税が配偶者にかかりません。不動産でもらうと、不動産取得税や登記費用などの移転コストがかかります。 贈与でなく、相続で自宅を引き継ぐ方が有利。 更に、配偶者が財産を多く持っている場合、持っている財産が上乗せされ、2次相続での相続税が増えてしまう可能性もあります。2次相続も含め税理士に相談することをお薦めします。 |
(2)住宅取得資金贈与の特例 (条件) ・父母又は祖父母からの贈与 ・もらう子又は孫が1月1日時点で18歳以上 ・合計所得金額が、2,000万円以下 家屋の床面積40㎡以上50㎡未満の場合 ⇒1,000万円以下 ・翌年3月15日までに住む又はその後遅滞な く住む見込み ・翌年3月15日までに贈与税の申告をする | 最大1,000万円 | ・増税の申告期限に1日でも遅れてしまえば、 住宅取得資金贈与の特例が使えず、贈与税負担が大きくなる。 ・住宅取得資金贈与の特例を使ってもらった後に、あげた人が相続を迎えた場合、非課税の金額については、相続財産に上乗せする必要がない。 ・祖父から孫に、住宅資金の贈与をした場合は、世代飛ばしになり、相続税の節税効果が大きい。 |
(3)教育資金の一括贈与の特例 (条件) ・直系尊属(父母・祖父母)から30歳未満の直系卑属(子・孫)への教育資金の一括贈与 ・直系卑属の合計所得金額が1,000万円以下であること ・教育資金管理信託契約を締結すること 令和8年3月31日までの期間限定 | 受贈者1人につき 最大1,500万円 | <教育資金>(証票⇒金融機関へ) ①学校に直接支払われるもの 入学金、授業料、保育料、給食費、修学旅行、遠足費等 ②学校以外に支払われるもの 塾などの学習、スポーツ、文化芸術活動費。通学定期代、留学渡航費など ・3年以内の信託等は管理残高に相続税が課税 ・一定の条件に該当すると、終了時に贈与税がかかることもありますが、、、 ⇒賢く活用すれば、相続後にも教育という最高のプレゼントを遺せる制度です。 |
(4)結婚・子育て資金の一括贈与の特例 (条件) ・令和7年3月31日まで結婚・子育て資金の一括贈与は非課税 ・合計所得金額が1,000万円以下の直系卑属が対象であること ・50歳で終了。残額に対し一般税率で贈与税課税 ・直系尊属が金銭を拠出し、金融機関と信託契約を締結 ・相続時に残額は相続財産とみなされ、孫は2割加算 | 受贈者1人につき 最大1,000万円 但し、結婚資金については、300万円 | そもそも父母・祖父母からの結婚式の費用負担はもちろん、新居での家具や家電を買うためにもらった場合、常識の範囲内であれば、贈与税は「非課税」です。 ※結婚や出産、子育てのお金をまとめて渡したいという場合にこの特例を使います。 <結婚資金とは> 最大300万円 ・婚礼費用など ・新居の賃貸契約「家賃・敷金など」 ・新居への引越し費用(複数回OK) <子育て資金>最大1,000万円(結婚資金除く) ・出産費用等、妊娠中に要する費用、不妊治療代 ・小学校就学前等の子の医療のための費用 ・幼稚園、保育園等に支払う保育料など |
(5)障害のある方への贈与 ①特定障害者扶養信託契約 委託者(親族等)、受益者(特定障害者) 受託者(信託銀行など) ②心身障害者共済制度に基づく給付金 | ①特定障害者扶養信託契約 ・特定障害者扶養信託契約:6,000万円 ・一定の特定障害者扶養信託契約 :3,000万円 ②心身障害者共済制度に基づく給付金(終身一定の支給年金を受け権利の価額)は贈与税が無税になる | 詳しくは、専門家(税理士、信託契約に強い仔士業の先生)にご相談下さい。 |
ご自身が活用できる非課税があるか、一度専門家に相談する価値があるでしょう。この一連の記事がキッカケ・参考になれば幸いです。
by 群馬県太田市 瀧口行政書士事務所より