まず最初に、前回の繰り返しになりますが、生前に適切な対策を打たない限り、身寄りがなく相続人がいない場合、
1)死亡直後の対処において、様々な物理的作業(遺体引取り、安置、葬儀・埋葬)と事務処理(死亡届、病院・施設費用の清算)をしてくれる人はいない
2)その遺産は、全て国のものになります(民法959条)
※ 特別縁故者が財産分与を受けたい場合は手続きが必要です。
人生の総決算期に適切な対応をしなかった結果、これまで懸命に働き築いてきた大切な財産が、想定外の不利益(国庫帰属)を被ってしまいます。
人生のステージ(時期)毎に、どんな対策を打ったら良いか、の具体例を「元気な時期、体調が心配な時期、終末期」の各ステージごとにご紹介します。 ご自分の置かれた状況のもと、達成したい目的、体調面、優先順位、予算などの制限内で対策を打つことになります。
ご自分だけで考えるのではなく、お気軽に専門家に相談し、一緒に作り上げていくことを推奨します。
- 元気な時期(目安:50歳~。早過ぎると思うくらいが良いでしょう。男性は女性に比べ平均年齢が短いので男性にお薦めです。元気な時期に、長期的な視野で準備を進めることが大切です。
①相続診断(ネット診断)の受診:生前対策の前段階として、専門家によるヒアリング、ネット診断を受け、現状把握とリスク分析を行ないます。
②エンディングノートの作成: 自分の最期の希望(葬儀の詳細や遺産の全容とその扱いなど)を記録しておきます。特にお薦めなのは、 財産目録の作成(不動産、預金、株式など)です。
③ライフプランの作成・見直し: 老後の生活資金、医療費、介護費用・葬儀・生命保険・各種費用の清算・遺産分割を計画し、財産管理・身上監護を安全に管理する仕組みを専門家と一緒に作り上げます。
④遺言書の作成:残された財産の分割方法を遺言(遺贈と遺言執行者)で明確にします。
⑤動画メッセージの制作:遺言書作成での「付言事項」だけでなく、生前の想い・感謝そして財産分割方法に至った理由など、自分の意思を尊重して争族にならないようにと動画で気持ちを伝えます。
⑥家族信託の可能性検討: 信頼できる家族や親族に財産を管理してもらえるか、家族信託契約を検討します。財産の管理や運用、将来的な受益者の指定をします。
⑦任意後見契約の準備: 将来、判断能力が低下した場合に備えて、信頼できる人に生活や財産管理を任せる任意後見契約を結びます。公証役場で契約書を作成・登記します。
⑧信頼できる代理人の選定: 「遺言執行者、家族信託の受託者、後見人」を信頼できる人に依頼し、将来的な支援体制を確立します。 - 体調が心配な時期(この時期には、健康状態や判断能力の低下に備え、医療、介護の選択や家族信託の検討を進めます)
①医療ケアの選択: 自分の治療方針や延命治療の希望を明確にし、医療機関に伝えます。
②介護計画の立案: 必要な介護サービスや施設の選定を行い、財産から介護費用を支出できるように準備します。
③信託契約の内容確認と見直し: 財産や受託者の管理状況を確認し、必要に応じて信託契約の内容を見直します。
④住まいの見直し: 介護が必要になった場合、バリアフリー住宅への引っ越しや自宅のリフォームを行うための資金計画を家族信託に反映させます。
⑤不動産の現金化:自宅に住み続けることを前提とした「買取りリースバック、リバースモーゲージ」を検討します。
⑥代理人や受託者との相談: 体調が悪化する前に、受託者(信託を任せた家族)や後見人と相談し、今後のサポート体制を確認します。
⑦信託契約の活用: 判断能力が低下した場合に備えて、信託契約が円滑に機能するよう受託者と定期的にコミュニケーションを取ります
家族信託契約、任意後見制度、不動産の現金化などは、別のカテゴリーの中でも、詳しく取り上げていますので、そちらをご覧ください。「サイト内検索」で、例えば、「家族信託」 or「後見制度」or「買取りリースバック」と入力し検索下さい。関連記事を探すことができます。
次回は、終末期での具体例を取りあげていきます。
参考にしてみて下さい。 by 群馬県太田市 瀧口行政書士事務所